2009 Fiscal Year Annual Research Report
随意運動の発現における前頭葉、大脳基底核、小脳の機能分散と機能連関の解明
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19670004
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
星 英司 Tamagawa University, 脳科学研究所, 教授 (50407681)
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Keywords | 神経生理学 / 神経解剖学 / 運動前野 / 随意運動 / 大脳基底核 / 小脳 / 認知 / 運動 |
Research Abstract |
これまでの生理学的研究で、運動前野が運動の準備や実行といった過程だけでなく、認知情報に基づいて動作決定を行う一連の過程にも関与していることが明らかとなってきた。一方で、大脳基底核疾患においても認知から運動まで幅広い機能が障害されることが分かってきている。最近の研究で、運動前野が大脳基底核から豊冨な入力を受け取ることが経シナプス性のトレーシング実験で示されてきているので、大脳基底核-運動前野ネットワークの認知情報処理、運動情報処理、そして認知と運動の統合過程における機能的役割を明らかにするために研究を行った。認知的指示に基づいて動作決定を行う課題を遂行中の被験体の淡蒼球の幅広い領域から細胞活動を一つ一つ記録し、続いて、活動特性や応答潜時の観点から、運動前野と淡蒼球の間で細胞活動を比較したところ、複数の知見が得られた。まず、抽象的動作プランを反映し始める潜時、動作情報が現れはじめる潜時、視覚空間性の応答が始まる潜時、のいずれにおいても、淡蒼球において運動前野にくらべて長いことを見出した。更に、運動前野で強く反映されていた「抽象的動作表現」から「実際の運動情報」への変換過程が、淡蒼球では殆ど反映されていないことがわかった。こうした知見は、大脳基底核と運動前野の機能的関与が本質的に異なることを示している。こうした機能的差異は、大脳基底核と運動前野の間の機能連関を考察するにあたって重要な基盤となる。
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