2007 Fiscal Year Annual Research Report
モット絶縁体とスピンホール絶縁体:普通でない絶縁体の物理の究明
Project/Area Number |
19674002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安藤 陽一 Osaka University, 産業科学研究所, 教授 (90371286)
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Keywords | モット絶縁体 / スピンホール効果 / 酸化物高温超伝導体 / ナローギャップ半導体 / スピントロニクス / フェルミアーク / 高品質単結晶 / 輸送特性 |
Research Abstract |
絶縁体は古くて新しい材料である。例えば、電子間の強いクーロン斥力のために電気が流れなくなっている「モット絶縁体」にキャリアを添加すると、普通の金属まで変化していく途中で高温超伝導や巨大磁気抵抗などの巨大物性が現れるが、その際の物理の本質はまだよくわかっていない。またスピン軌道相互作用によってエネルギーギャップが開いている絶縁体は「スピンホール絶縁体」である可能性が指摘され、電場をかけると電気は流れないのに電子スピンの流れが生じることが理論的に予想されているが、まだこの効果は実証されていない。そこで本研究では、高品質単結晶成長技術、高度なドーピング制御技術、極低温での精密物性測定技術を活かしてこれらの問題を解明することに挑む。本年度はまず、研究遂行上不可欠な試料作製関係の設備の導入を行うとともに、本補助金で雇用する研究員としてAlexey Taskinを採用した。さらに研究代表者の研究室の瀬川耕司准教授の協力も得て、電子と正孔の両極性ドーピングができるモット絶縁体である(Y,La)(Ba,La)_2Cu_3O_yの単結晶作製と評価を行うと共に、スピンホール絶縁体の候補物質PbSの多結晶試料作製およびドーピング制御と評価を行った。これと並行して、代表的なキャリア添加モット絶縁体である銅酸化物高温超伝導体の電子状態を理解するための研究も行った。特に高温超伝導体の研究においては極低温における熱伝導率の物理的意味について考察を行い、最近カナダのグループによって報告された新奇なボソンの存在が疑わしいことを明らかにした(Physical Review Letters誌にCommentとして出版)。
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