2009 Fiscal Year Annual Research Report
マウスにおける性特異的ペプチド性フェロモンの鋤鼻神経系での受容メカニズムの解明
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19677002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東原 和成 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00280925)
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Keywords | フェロモン / 鋤鼻器官 / マウス / フェロモン受容体 / ESP1 / ペプチド / 性行動 |
Research Abstract |
本研究では、オス涙から分泌されてメスの鋤鼻神経を発火させる性特異的ペプチドESP1(約7kDa)を認識する受容体の同定およびその受容体を発現している神経が脳のどこに投射しているかという神経回路の可視化を行う。また、ESP1がメスに対してどのようなフェロモン作用をもつか行動解析を行う。最終的には、ESP1受容体ノックアウトマウスを用いて、「ESP1-鋤鼻受容体-神経回路-行動」の一連のシグナル経路を明らかにする。本年度は、ESP1の機龍として、メスの性行動について解析したところ、ESP1にさらされたメスマウスにおいてロードシス行動(オスに対する受け入れ態勢行動)が増長されることがわかった。哺乳類における初めてのペプチド性の性フェロモンである。また、ESP1の受容体であるV2Rp5遺伝子のノックアウトマウスを作製したところ、ノックアウトメスではESP1のフェロモン効果が消失していることが明らかとなった。これらの知見は、ESP1のフェロモン効果は、V2Rp5受容体を介した特定の鋤鼻神経回を介していることを示している。さらに、ESP1は、近交系およびクローズドコロニーにおいては、BALBおよびDBA系統でのみ、オス涙に分泌されており、他のほとんどの系統では検出できなかった。それに対して、ほとんどの野生由来のオスマウスの涙には大量のESP1が分泌されていることが明らかになった。ESP1はマウスにとって交尾のために重要なフェロモンであるが、研究用マウスは小さなケージで何代も継代された結果、その必要性が低下し発現量が落ちていったという、興味深い分子進化が示唆される。
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