2007 Fiscal Year Annual Research Report
オーファン輸送体による多剤耐性機構の解明と新規治療薬開発
Project/Area Number |
19679002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 邦彦 Osaka University, 産業科学研究所, 助教 (30432438)
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Keywords | 感染症 / 薬剤耐性 / 多剤耐性 / 病原性 / 異物排出 / 薬剤排出 / トランスポーター / 細菌 |
Research Abstract |
現在、臨床現場において様々な多剤耐性菌が出現し、耐性菌感染症は医療従事者が直面する重要な問題である。異物排出トランスポーターは生体異物や複数の抗菌薬を細胞外へ排出することにより細菌に多剤耐性をもたらす。これまでに私は、病原細菌に数十個もの薬物・毒物を排出する輸送体が存在することを明らかにした。さらには、サルモネラが実際に宿主の中で毒性を発揮するためにもトランスポーターの存在が必須であることも見出した。このことは、これらのトランスポーターが実際には何らかの生理的基質の輸送体であることを物語っている。これら輸送体は生理的基質が未知という点で、「オーファン輸送体」であると考えられる。本研究では、「オーファン輸送体」が担う生理機能を解析し、細菌感染における輸送体の役割を明らかにする。また、輸送体を阻害することにより、細菌の薬剤耐性と病原性を同時に軽減させることのできる新薬を開発することができるか、可能性を探る。今年度得られた成果は以下の通りである。 1)サルモネラのオーファン輸送体を欠損させた株と野生株を用いて、オーファン輸送体の網羅的フェノタイプ解析を行った。その結果、これらオーファン輸送体は臨床の場で用いられる抗菌剤に対しての耐性に関与していることが明らかとなった。また、抗菌剤耐性だけではなく、銅や亜鉛といった金属耐性にも関与しているという新たな生理機構を発見した。 2)オーファン輸送体がどのように発現調節されているのかを知るために、トランスクリプトーム解析を行った結果、酸耐性調節因子であるGadXや糖代謝調節因子であるCRPが輸送体発現を制御することで、薬剤耐性化を制御しているという新しい機構を発見した。 3)極小チャンバーを用いることで、5〜10分でオーファン輸送体の活性を測定することのできる簡便で迅速な実験方法を確立した。 本研究成果は輸送体を理解する上で重要であるばかりではなく、耐性菌感染症を克服するのにも有用性をもつものであると評価され、日本抗生物質学術協議会および日本化学療法学会より表彰を受けた。
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Research Products
(31 results)