2009 Fiscal Year Annual Research Report
オーファン輸送体による多剤耐性機構の解明と新規治療薬開発
Project/Area Number |
19679002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 邦彦 Osaka University, 産業科学研究所, 准教授 (30432438)
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Keywords | 感染症 / 薬剤耐性 / 多剤耐性 / 病原性 / 異物排出 / 薬剤排出 / トランスポーター / 細菌 |
Research Abstract |
現在、臨床現場において様々な多剤耐性菌が出現し、耐性菌感染症は医療従事者が直面する重要な問題である。トランスポーターは生体異物や複数の抗菌薬を細胞外へ排出することにより細菌に多剤耐性をもたらす。これまでに、病原細菌に数十個もの薬物・毒物を排出する輸送体が存在することを明らかにした。さらには、サルモネラが実際に宿主の中で毒性を発揮するためにもトランスポーターの存在が必須であることも見出した。このことは、これらのトランスポーターが実際には何らかの生理的基質の輸送体であることを物語っている。これら輸送体は生理的基質が未知という点で、「オーファン輸送体」であると考えられる。本研究では、「オーファン輸送体」が担う生理機能を解析し、細菌感染における輸送体の役割を明らかにする。また、輸送体を阻害することにより、細菌の薬剤耐性と病原性を同時に軽減させることのできる新薬を開発することができるか、可能性を探る。今年度得られた成果は以下の通りである。 サルモネラのオーファン輸送体は、β-ラクタム剤をはじめとする抗菌薬を排出し、細菌を多剤耐性化させる。一方で、この輸送体遺伝子欠損株はマウスに対する病原性が減弱している。オーファン輸送体は通常ほとんど発現していないが、鉄欠乏条件下において、これら輸送体が細菌の生育に必要であることが分かった。鉄は病原性細菌にとって必須の微量金属であり、細菌は効率的な鉄取り込み様式をもっている。細菌はシデロフォアとよばれるFe^<3+>と特異的に結合する分子(キレーター)を分泌し、シデロフォア-Fe^<3+>複合体を取り込むことにより鉄を吸収する。解析の結果、オーファン輸送体はシデロフォアであるエンテロバクチンを排出し、菌の鉄獲得に関与していることを発見した。病原細菌にとって鉄は病原性を成立させるために必須の元素であり、細菌が宿主から鉄を奪うのに対して、宿主側は細菌の鉄吸収を抑制することにより、その増殖を阻害する感染防御機構を保持している。オーファン輸送体によるシデロフォア排出は、宿主内において細菌が鉄を獲得するために必要であり、この機構が病原性成立に関与していることが強く示唆される。
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Research Products
(41 results)