2009 Fiscal Year Annual Research Report
色素幹細胞の質的変化に着目した白髪発症機序の解明と老化解明へのアプローチ
Project/Area Number |
19679006
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西村 栄美 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 教授 (70396331)
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Keywords | 色素幹細胞 / 加齢 / 老化 / ニッチ / ゲノム損傷 / ATM / 白髪 / 毛包 |
Research Abstract |
加齢に伴い色素幹細胞のプールが減ってくることをこれまでに明らかにしてきたが、なぜ加齢に伴って減ってくるのか、早老症でなぜ若白髪がみられるのかについては謎であった。本研究課題から、ゲノムの損傷ストレスと色素幹細胞プールの枯渇、および白髪の発症に深い関連があることが明らかになった。ゲノムは、日々、内因性および外因性のゲノム損傷に晒されている。組織幹細胞のように寿命の長い細胞において損傷の蓄積が問題になると考えられているが、加齢やゲノム損傷に際して組織幹細胞がどのような運命を辿るのか、実際に成体組織内で何が起こっているのかその詳細は不明であった。我々は色素幹細胞システムにおける利点を生かして幹細胞運命解析を行った。マウスの毛周期を同調した上で放射線照射などの種々のゲノムストレスを誘発し、その後の色素幹細胞の運命を追った。その結果、ゲノムストレス後には、従来考えられて来たようなアポトーシスや細胞老化などといった運命ではなく、むしろ幹細胞が未分化性を失い、ニッチ内でそのまま成熟分化してしまう(異所性分化する)ことが判明した。その結果、幹細胞プールが枯渇し、色素細胞を毛母に供給出来なくなって毛が白毛化した。そのプロセスは、加齢に伴って観察される異所性分化細胞とその消失の過程と酷似していることから、加齢に伴ってみられる幹細胞の枯渇も、加齢に伴うゲノムストレスにより誘導される幹細胞の未分化性消失/異所性分化を反映しているものと考えられた。さらに、ゲノム損傷の修復が効率よく起こらないATM欠損マウスにおいては、幹細胞の未分化性消失が顕著に促進されており、色素幹細胞プールの量および質を保つ上でATMが重要な役割を果たしていることが明らかになった。色素幹細胞の運命制御において、"自己複製チェックポイント"なるものが存在し、ゲノムの損傷レベルに応じた幹細胞の運命制御機構があると考えられた。
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Research Products
(12 results)