2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパラン硫酸による神経堤細胞の分化制御機構の解明と緑内障の新しい病態概念の確立
Project/Area Number |
19679008
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
稲谷 大 Kumamoto University, 医学部附属病院, 講師 (40335245)
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Keywords | ゲノム / 生理活性 / 糖鎖 / 発生・分化 / 臨床 |
Research Abstract |
緑内障の病状を進行させる最も重要な因子である眼圧値の上昇は、隅角線維柱帯組織の機能的障害を起点としていることが広く知られている。この隅角線維柱帯組織は、神経堤細胞に由来する細胞によって構成されており、神経堤細胞の分化異常が緑内障発症と密接に関わっている。隅角線維柱帯組織には細胞外基質グリコサミノグリカンが豊富に発現しており、このグリコサミノグリカンのうちヘパラン硫酸をマウスの発生段階で神経堤細胞で選択的に欠損させたところ、神経堤細胞の分化異常が生じ、隅角線維柱帯の奇形や角膜形成異常、口蓋裂、耳介奇形などヒトの発達緑内障Peters'奇形でみられる先天異常と酷似した発生異常がみられた。この奇形は、隅角線維柱帯組織の発生に重要なTGFSS2の欠損でみられるマウス奇形と酷似しており、このヘパラン硫酸の欠損マウスの眼組織では、TGFSS2の下流のシグナルSMADのリン酸化が挿制されていることや、TGFSS2刺激によって角膜組織で産生されるコラーゲンの産生も著しく低下していることが確認された。また、発達緑内 障の原因遺伝子であるfoxc1やpitx2の発現も阻害されていた。ヘパラン硫酸の欠損した神経堤細胞を培養すると、TGFSS2による反応が低下しており、神経堤細胞の細胞表面に発現するヘパラン硫酸がTGFSS2による神経堤細胞の分裂、分化に極めて重要な因子であることが示された。実際、TGFSS2とヘパラン硫酸との相互作用を低下させると、隅角形成異常と眼圧上昇を合併する発達緑内障マウスが生まれた。本研究によって、神経堤細胞の分化におけるヘパラン硫酸の役割がin vivoとin vitroで証明された。
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Research Products
(5 results)