2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパラン硫酸による神経堤細胞の分化制御機構の解明と緑内障の新しい病態概念の確立
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19679008
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
稲谷 大 Kumamoto University, 医学部附属病院, 講師 (40335245)
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Keywords | ゲノム / 生理活性 / 糖鎖 / 発生・分化 / 臨床 |
Research Abstract |
隅角線維柱帯組織の構成成分であるヘパラン硫酸を合成する酵素の遺伝子Ext1をマウス個体発生の神経堤細胞でノックアウトさせたところ、ヒトのPeters奇形に酷似した発達緑内障モデルマウスが生まれた。ヘパラン硫酸の欠損でみられた表現型の分子メカニズムを検証したところ、TGFB2の下流分子であるSmad2のリン酸化が著しく低下していた。ヘパラン硫酸を介したTGFB2シグナリングが、生体内の神経堤細胞の発生に不可欠なメカニズムであるのかを確認する動物実験をおこなった。Ext1欠損マウスとTgfb2欠損マウスで見られた特徴的な隅角の表現型が、2系統間の交配によってそれぞれの遺伝子が減数した個体(ダブルヘテロマウス)でその表現型が増強していれば、Ext1とTGFB2との間の相互作用が隅角発生に深く関わっていることを示す結果となる。Ext1ヘテロマウスとTgfb2ヘテロマウスのそれぞれ独立した個体では、正常なシュレム管及び線維柱帯組織を確認することが出来た。ところが、Ext1とTgfb2とのダブルヘテロマウスでは、シュレム管の構造が欠損しており、線維柱帯細胞の細胞数も減少していることがわかった。このダブルヘテロマウスは成獣まで発育した。トノラボを用いて眼圧を測定したところ、ダブルヘテロマウスは、野生型と比較して眼圧が有意に上昇していた。この結果は、隅角線維柱帯組織の発育には、ヘパラン硫酸とTGFB2との相互作用が必要であることを意味しており、この作用が障害されると、マウスに発達緑内障モデルが生じることがあきらかになった。
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Research Products
(7 results)