2008 Fiscal Year Annual Research Report
クラスターイオンビームによる有機高分子材料への生体活性の付与
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19680027
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川下 将一 Tohoku University, 大学院・医工学研究科, 准教授 (70314234)
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Keywords | クラスターイオンビーム / 生体活性 / アパタイト / 擬似体液 / シリコーンゴム / 表面改質 / 官能基 / 親疎水性 |
Research Abstract |
ポリエチレンテレフタラートなどの高分子材料に優れた生体活性(アパタイト形成能)を付与できれば、同材料は生体内で骨と安定に結合する人工靭帯等として有用である。本研究では、種々のクラスターイオンを種々の高分子基板に照射することにより、クラスターイオンビーム照射による高分子の表面構造変化を明らかにし、さらにクラスターイオンビーム照射基板のアパタイト形成能を調べることを目的とする。 平成20年度は、平成19年度の知見に基づき、酸素(O_2)クラスター・モノマー混合イオンビームを種々の条件(加速電圧3〜9kV、ドーズ量1×10^<14>〜2.5×10^<15>ions/cm^2)下でシリコーンゴム基板に照射した。得られた試料の親水性を接触角測定により評価し、同試料の表面構造変化をX線光電子分光法により調べた。このようにして得られた試料をヒトの体液の約1.5倍の無機イオン濃度を有する擬似体液(1.5SBF、pH7.40、36.5℃)に浸漬することにより、試料のアパタイト形成能を評価した。その結果、何れの条件のイオンビーム照射によっても、基板の親水性は著しく向上し、純水との接触角は約100°から約10°にまで低下した。また、イオンビーム照射により、基板表面に酸化ケイ素(SiO_x)クラスターが形成されていることが分かった。未照射基板は1.5SBF中に7日間浸漬されてもその表面にアパタイトを形成しなかったのに対し、イオンビーム照射した基板はアパタイトを形成した。また、アパタイト形成能は、加速電圧7kV、ドーズ量1×10^<15>ions/cm^2のときに最も高くなった。基板のアパタイト形成能は、基板表面に形成されたSiO_xクラスターあるいはSi-OH基の量(あるいは特定の構造)に関係付けられると推察された。以上より、適度な条件でO_2クラスター・モノマー混合イオンビームを照射すれば、シリコーンゴムにアパタイト形成能を付与できることが明らかとなった。
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