2009 Fiscal Year Annual Research Report
健康長寿の基盤となる新たな栄養シグナルの発見と疾病予防における役割
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19680030
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
竹谷 豊 The University of Tokushima, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30263825)
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Keywords | シグナル伝達 / リン / 血管内皮機能 / 予防栄養学 / 高リン血症 / 慢性腎臓病 |
Research Abstract |
本研究では、これまで一貫して栄養素、特に近年老化との関係が注目されているリンによる動脈硬化発症のメカニズムと臨床的意義について検討を行ってきた。本年は、具体的な病態モデルとして腎不全モデル動物(高アデニン食負荷ラット)を用い、リン摂取量と動脈硬化発症に関わる内皮機能障害について検討を行った。その結果、リン制限食により腎不全病態に伴う血管内皮機能障害を改善することを見出した。腎不全病態における高リン血症が血管内皮機能障害を引き起こすシグナルをリン制限食により抑制し、血管内皮機能障害を抑制することが考えられた。さらに、ヒトを対象とした研究においても、高リン食を摂取させ、血清リン濃度を上昇させると一過性の血管内皮機能障害を生じるが、この反応は、一食当たり400mgのリン摂取では見られず、800mgあるいは1200mgのリン摂取で有意に観察された。これらの結果より食事からのリン摂取による血管内皮への影響を考えると一食当たり800mg未満が上限と考えられ、400mg程度にすることが望ましいと考えられた。これらの結果より、リンを過剰に摂取するような食生活は、生活習慣病、とりわけ心血管疾患のリスクになる可能性が示唆された。また、腎不全の病態下にあるような患者や遺伝的に血清リンが高くなるような背景をもつ人には、リン制限が有効であることが示唆された。今後、より個人に対応したテーラーメイド予防栄養学を進めて行くには、血清リン濃度や食後の血清リン濃度上昇度を指標に、ゲノムワイド解析などにより、これらの値に影響するような遺伝的な背景を明らかにすることが必要であると考えられた。
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Research Products
(9 results)