2007 Fiscal Year Annual Research Report
環オホーツク海域における化学的変質過程を含めた鉄移送量の定量的評価
Project/Area Number |
19681001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西岡 純 Hokkaido University, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
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Keywords | オホーツク海 / 鉄 / 物質循環 / 中層循環 / アムール川 |
Research Abstract |
19年度夏季にロシア研究船を用いた研究航海を西部オホーツク海で実施した。この航海では,海水中の鉄分を形態別に測定することで現場ろ過粒子採取装置を用いた粒子態鉄の存在量の把握、中空糸フィルターを用いたコロイド状鉄存在量の把握を行った。 これらの航海で得られたデータの解析の結果、西部オホーツク海には鉄を移送する2つのプロセスがあることが明らかとなった。1つは,大陸棚起源の鉄分がオホーツク海中層水によって移送され、千島海峡で広い深度層に分配された後、西部北太平洋に送り出されているプロセスであり,このプロセスで移送される鉄を定量的に把握した。また,主に移送される形態としては粒子態鉄であり,大陸棚上の有機物と密接に結びついたものであると考えられた。2つ目は,アムール川の淡水の影響とともに表面を拡散して移送される鉄分であり,このプロセスで移送される鉄も定量的に把握した。移送される主な形態は溶存態であり,コロイド粒子も多く含んでいる事が明らかとなった。中層循環で移送される鉄は,表層を伝って移送される鉄の2オーダー多い量であり,より遠方まで移送されることが明らかとなった。その理由としては,除去されにくい懸濁粒子にとりこまれ,中層を移送されることによって表層の生物過程の影響を受け除去されないことが考えられた。また,粒子態から溶存態に変質する過程を確認するための室内実験用のサンプルを15測点以上で採取する事に成功した。さらに船上培養実験の結果,表層を移送される鉄や,中層に存在する鉄は植物プランクトンの増殖に利用可能な形態であることを確認した。
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