2008 Fiscal Year Annual Research Report
生態系の時間軸構造の解明-放射性炭素分析による生態系炭素循環解析手法の構築-
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19681002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陀安 一郎 Kyoto University, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
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Keywords | 生態系 / 食物網構造 / 放射性炭素 / 炭素循環 / 時間軸 / 溶存無機炭素 / 溶存有機炭素 / 安定同位体 |
Research Abstract |
大気CO_2の放射性炭素14(Δ^<14>C)値は米ソ冷戦下の大気核実験によって大きく変化したことが知られている。光合成によって固定された有機物は、もともとのCO_2のΔ^<14>C値を保存しているため、炭素循環において「時間軸を表す時計」として用いることができる。本年度は犬上川および芹川において、上流域における食物網を示す同位体マップおよび流下過程に沿った食物網の同位体マップの変化を調査した。その結果、付着藻類は地下由来の無機炭酸を示す低いΔ^<14>C値を持っていたのに対し、粒状有機炭素は陸上由来の有機炭素を起源とする高いΔ^<14>C値を示すことがわかった。これらを利用する水生昆虫、魚類も含んだ生物群集において、Δ^<14>C値と窒素同位体比(δ^<15>N)より推定した食物網と、炭素安定同位体比(δ^<13>C)と窒素安定同位体比(δ^<15>N)より推定した食物網を比較したところ、両河川において違いがみられた。Δ^<14>C値およびδ^<13>C値による違いは、その同位体決定機構の違いによることが考えられたが、これについては21年度に集中的に比較検討することとした。また、陸域生態系に関しては、北大苫小牧研究林および八ヶ岳において植物遺体、土壌腐植、土壌層および土壌動物群集の解析を行った。その結果、広葉樹と針葉樹の違いが土壌動物の多様性の違いを生み、それによって土壌有機炭素動態が影響を受けることが示唆された。さらに本年度から、森林伐採からの経過年数によって森林の食物網構造がどのように変化するかというテーマに関する調査を開始した。予備的データからは、時系列に伴って生物群集のΔ^<14>C、δ^<15>N、δ^<13>Cが変化し、これらを用いた食物網構造解析の有用性が示唆された。
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