2008 Fiscal Year Annual Research Report
磁性薄膜でのレーザー光電子による偏光可変・多光子磁気二色性と光電子顕微鏡の研究
Project/Area Number |
19681013
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
中川 剛志 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (80353431)
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Keywords | 光電子放出 / 磁気円二色性 / 表面磁性 / 超高速分光 / ナノ磁性 |
Research Abstract |
本年度は主に二光子光電子分光による磁気円二色性の研究を行った。これまで二光子光電子分光磁気円二色性の研究はまったく行われておらず、どの程度の非対称度が得られるか興味深い。二光子過程では電子は一度中間状態に励起されてから、終状態へと励起され、光電出放出される。この中間状態が磁気円二色性にどの程度影響するかが不明である。 実験試料にNi/CU(001)を使用し、実験を行った。実験の結果、二光子過程と一光子過程では同程度の磁気円二色性が得られた。その非対称度は10%程度であった。また角度依存測定をすることで45度入射のときに二光子磁気円二色性が最も大きくなり、その値は30%以上に達した。これは一光子での測定値(10%)より大きな値であった。これら二光子の実験結果は同じエネルギーの一光子過程のみ(つまり始状態から中間状態のみの遷移)を考えた理論計算で定性的に再現できることが分かった。 本研究の実験結果より、二光子磁気円二色性は一光子のそれと比べ遜色ない非対称度が得られることがわかった。その理由としては始状態から中間状態への一光子過程が磁気円二色性の大きさを決める大きな要因であることが考えられる。 二光子過程を用いても磁気円二色性は得られ、その非対称度は一光子のそれとほぼ同程度であった。このことより、二光子光電子でも光電子顕微鏡により磁区観察ができる。試料の仕事関数が大きい試料や深い準位の磁区像を取る際には二光子過程により測定できる対象が広がることが期待できる。
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