2009 Fiscal Year Annual Research Report
磁性薄膜でのレーザー光電子による偏光可変・多光子磁気二色性と光電子顕微鏡の研究
Project/Area Number |
19681013
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
中川 剛志 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (80353431)
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Keywords | 光電子放出 / 磁気円二色性 / 表面磁性 / 超高速分光 / 磁性 |
Research Abstract |
磁気円二色性(MCD)はスピン検出器を使わない磁気測定で、磁化の向きを高感度で測定できる方法である。磁性遷移金属の価電子帯ではMCD非対称度は小さいことが多いが、本課題で明らかになりつつ様に、励起光エネルギー、偏光、入射角などを適切に選ぶことで大きなMCD非対称度が得られる。21年度は1)角度分解光電子分光MCD測定の自動化、2)偏光依存特性の研究を行った。MCD測定は磁化反転もしくは偏光反転したスペクトル対から差分スペクトルを得ている。この際、光強度の変化、試料状態の変化による偽のMCDを取り除くために迅速にかつ多数回の磁場もしくは偏光切り替えをすることが精度よい測定には必要である。1)の自動化によりS/Nのよいスペクトルが安定して得られるようになった。また2)はNi/Cu(001)およびCo/Pt(111)にて検討した。Ni/Cu(001)では3.1eV付近の光で電子励起することにより約30%の大きいMCD非対称度が観測された。その理由はNi3d-4spバンド間の共鳴励起である。そのため、1光子、2光子励起であっても同程度のMCD非対称度が得られ、それぞれ20%、28%と大きい値であった。角度分解光電子分光を用いた研究でこの共鳴励起が明確に観測できた。他にもCo/Pt(111)で二光子励起MCDが10%以上であることを全電子収量および角度分解光電子分光により明らかにした。また、Co/Cu(001)ではC.Chenらが直線偏光による磁気二色性が10%以上になることを報告したが、我々も同様の結果が得られることを確認した。この方法はCo/Pt(111)でも有効であるかを実験にて確認中である。
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