2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19683003
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊藤 恵子 Senshu University, 経済学部, 准教授 (40353528)
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Keywords | サービス業 / オフショアリング / 生産性 / 直接投資 / 産業集積 / 国際情報交換 / 多国籍企業 |
Research Abstract |
まず、企業レベルの研究として、同一産業内の企業間生産性格差に関する分析を行った。1990年代半ば以降の「失われた十年」に、製造業・非製造業ともに、産業内企業内格差は拡大した。製造業については、一部の高生産性企業が順調に生産性を上昇させてきたのに対し、大部分の企業は生産性の上昇が非常に小さく停滞していたことが格差拡大につながった。しかし、非製造業では、高生産性企業が生産性を伸ばした一方、低生産性企業はさらに生産性を下げ、ますます生産性レベルが下がったことで格差が拡大した。なぜ、非製造業で多くの低生産性企業がさらに生産性を下げたのか、生産性計測の問題も含め、詳細な分析が必要である。 また、産業別にオフショアリング(海外からの中間財・サービスの輸入)の大きさを計測し、オフショアリングと国内の生産性との関係を分析した。欧米や韓国などでは、製造業企業によるサービス業務の海外からの輸入が増加してきたという先行研究がある。しかし、本研究の結果によると、日本の製造業企業では中間財の輸入は大幅に増加したにもかかわらず、中間投入サービスの輸入はあまり増加していないという、米国などとは対照的な結果となった。米国では、中間投入サービスを海外から輸入することにより、国内のコスト削減や業務の効率化などを積極的に進め、国内生産性が高まったという。しかし、本研究の結果、日本の製造業企業では、中間財の輸入(特にアジアからの輸入)は国内の生産性を高めたが、サービスの輸入は国内の生産性に有意な影響を与えていない。ただし、情報サービスに限ると、情報サービスの輸入比率の高い産業で生産性が高いという関係が見られ、情報サービスの海外へのアウトソーシングが進めば、国内の生産性が高まる可能性があることを示唆している。今後、日本企業がサービスの国際化を促進することによって生産性を高めていくために直面している様々な課題についても、検討していく必要がある。
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Research Products
(4 results)