2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグスとbクォークとの結合定数測定による新現象探索とシリコン検出器開発
Project/Area Number |
19684006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
花垣 和則 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40448072)
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Keywords | ヒッグス / bクォーク / トップクォーク / LHC / シリコン検出器 |
Research Abstract |
今年度はLHCが順調に稼働し実データの収集を開始した。そこで、まずは、本研究テーマに深く関わりのあるbクォーク同定性能を実データから評価する手法を確立した。将来行うヒッグスとbクォークとの結合定数測定の際には、bクォーク同定性能の評価が最も大きな系統誤差の要因となることが予想されるので、bクォーク同定効率および誤同定確率を精度よく測定すること、およびその手法の確立は、実験初期のデータを使って行うべき重要な研究である。 bクォーク同定が重要な役割を果たすと同時に、7TeVという人類未踏のエネルギー領域でのQCDの検証のために、トップクォーク対生成断面積の測定も行った。トップクォーク対生成事象は、ヒッグス探索で最も重要な背景事象の一つなので、その生成断面積を精度よく測定することはヒッグス探索の第一歩としても非常に重要である。その結果は、理論的予想とよく一致した。同時に、系統誤差の精査により、現時点での検出器の性能および問題点を浮かび上がらせることに成功した。 bクォーク同定の主役はシリコン飛跡検出器であるが、ビーム衝突点に近く放射線損傷が大きいので、将来的には交換することが決まっている。そこで、新型シリコン検出器のプロトタイプを試験するためのデータ収集システムの開発を行った。現存するシステムでは、同時に多くの検出器からの信号を読み出せないという拡張性の問題があったが、開発した新システムではこの問題を解決することができた。同時に、汎用性、価格の面からも既存システムを大きく上回るシステムを構築できた。
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