2009 Fiscal Year Annual Research Report
X線イメージング偏光観測による宇宙における粒子加速現場の解明
Project/Area Number |
19684008
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
玉川 徹 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 専任研究員 (20333312)
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Keywords | X線偏光計 / 宇宙物理 / X線天文学 / ガス電子増幅フォイル |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に開発したフライト用偏光計プロトタイプ機による偏光測定実験と並行して、ガス電子増幅フォイルの気球高度・宇宙環境利用に向けた高度化開発、環境試験をおこなった。 ガス電子増幅フォイルは高電圧を印加するので、上空での放電が問題となる。我々は、放電を意図的に継続させる系統的な実験をおこない、放電を繰り返すことによりガス電子増幅フォイルが破壊される様子を調べた。その結果、放電率が時間とともに指数関数よりも急に増加していくことを見つけた。これは放電を繰り返すとフォイルが破壊されることを意味しており、ワイヤー型比例計数管で知られているようなエージングによる放電率の減少が起きないので取り扱いに注意すべきであることを初めて明らかにした。またフォイル表面の銅酸化による劣化を調査し、X線光電子分光法により表面酸化がどのように進むのかを定量評価し、それを防ぐ最適化をおこなった。Geant4シミュレーターによる高高度でのバックグラウンド調査も引き続きおこない、荷電粒子が引き起こすバックグラウンドを大幅に軽減する手法を確立した。最終目標である、プロトタイプ偏光計を気球に搭載して天体を観測することは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大気球放球場が三陸から北海道に移る時期と重なり、残念ながら実施することはできなかった。しかし、本研究で改良したガス電子増幅フォイルと偏光計の技術が認められ、米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのX線グループと協力して、ロケット実験を実施する新たな計画へと結実した。
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