2008 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子井戸における零磁場スピン分離の定量的研究とメゾスコピック物理への応用
Project/Area Number |
19684009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古賀 貴亮 Hokkaido University, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (30374614)
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Keywords | スピントロニクス / 半導体量子井戸 / スピン軌道相互作用 / ラシュバ効果 / メゾスコピック物理 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、InGaAs/InAlAs量子井戸(電子系)での正方形/長方形ループ配列構造の電子輸送特性(スピン干渉効果)の測定を行った。スピン干渉効果は、量子井戸のポテンシャルの歪みに依存するRashba効果と結晶構造の空間反転非対称性に起因するDresselhaus効果、双方に依存するため、ループ配列構造を長方形にし、その長辺をどの結晶軸に向けるかによって、Dresselhaus項の結晶方位依存性(異方性)を研究することができる。今回、そのような実験に初めて成功した。その結果、理論で使われている結晶方位は、V族元素を原点に配置し、III族元素を1/4(111)の点に配置して定義されているが、実験で使われている結晶軸の定義はその逆であることが判明した。そのため、はじめのうちは、実験結果と理論結果が一致せず、研究に困難を来たしたが、InP(001)半導体基板表面にフォトレジストにより、ライン/スペースパターンを描き、塩酸によるエッチングを行い、その後の断面形状観察により、原子配置を元にした曖昧さのない結晶方位を確定した。このことにより、理論の場合と実験の場合で結晶軸の定義が同一となっていないことがはっきりとし、この問題を修正すると、実験結果と理論結果とは、見事に一致した。また、新たな展開として、ポテンシャル形状が対称な量子井戸にて、サブバンドをカップルする効果としてのRashba効果の研究を開始した。モデルシステムとして、AlSb/InAs/AlSb量子井戸を仮定したシミュレーションで、サブバンド分離エネルギーの値は、Rashba効果によって支配されることがわかった。これらの結果は、量子情報素子実現の鍵となる電子スピン制御に関する基礎的な研究として非常に重要で意義深いもである。
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