2009 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子井戸における零磁場スピン分離の定量的研究とメゾスコピック物理への応用
Project/Area Number |
19684009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古賀 貴亮 Hokkaido University, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (30374614)
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Keywords | スピントロニクス / 半導体量子井戸 / スピン軌道相互作用 / ラシュバ効果 / メゾスコピック物理 |
Research Abstract |
昨年度測定を行った、InGaAs/InAlAs量子井戸(電子系)での正方形/長方形ループ配列構造の電子輸送特性(スピン干渉効果)の物理的な理解を深めるために、当該ナノ構造において、半古典論ビリヤードシミュレーションを行った。スピン干渉効果の起源である、Rashba、Dresselhausスピン軌道係数をパラメータとして、実験結果との比較を行ったところ、Dresselhaus係数に関しては、これまで知られていた、k・p理論で予測される値の約5分の1、Rashba係数に関しては、これまでの約1.6倍程度の大きさになっていることが示唆された。これらの値を確かめるために、ゲート制御によりスピン軌道相互作用を最小にすることができるエピ成長基板を用い、弱局在/反局在の測定を改めて行い、全ての磁場領域/スピン分離をカバーするGolubの反局在モデルを用いて、希釈冷凍機温度で測定した零磁場付近の磁気抵抗効果を詳細に解析した。その結果、半古典論ビリヤードシミュレーションで示唆されたRashba係数、Dresselhaus係数の値の妥当性が確認された。このように、1つの試料において、Rashba、Dresselhaus係数の大きさが、曖昧さなく同時決定されたことは、他の類似研究では例のない画期的な結果であるといえると共に、当初掲げた研究目標そのものが100%達成されたと言って良い。今後は、得られた知見を用いて、スピン量子デバイス、量子情報素子の開発等の基礎/応用研究につなげていきたい。
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