2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19684010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
組頭 広志 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00345092)
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Keywords | 量子井戸 / 角度分解光電子分光 / 表面・界面物性 / 強相関電子系 / 強相関エレクトロニクス / 酸化物超構造 / 酸化物ヘテロ構造 / 酸化物薄膜 |
Research Abstract |
本研究では、レーザー分子線エピタキシー法により原子レベルで構造を制御した「強相関酸化物量子井戸構造」を作製し、その電子状態を光電子分光法により直接決定することで、新規な低次元電子状態をデザインすることにある。そのため、本年度は、「強相関酸化物量子井戸」で発現する新規な2次元電子状態、特に伝導性酸化物を用いた金属量子井戸構造の創成、およびフェルミ準位近傍に存在するサブバンド分散(量子化準位)の直接観測にターゲットを絞って研究を行い、下記の成果を得た。 1.SrVO_3量子井戸構造の作製と量子化準位の観測 伝導性酸化物であるSrVO_3を用いた金属量子井戸構造を作製し、そのin-situ角度分解光電子分光を行った。その結果、明確な量子化準位の観測に成功した。これは、現時点で酸化物ヘテロ構造において金属量子井戸状態を創成・観測した初めての結果である。また、この量子化準位の膜厚依存性については、基本的にはこれまでの通常金属における量子井戸の概念で理解できることが明らかになった。しかしながら、電子相関の強い異方的なV 3d電子状態を反映した「軌道選択的量子化状態」や「サブバンドの異常有効質量増大」などの強相関金属量子井戸特有と思われる現象を観測した。 2.LaNiO_3超薄膜における電子状態の膜厚依存性 LaNiO_3(LNO)/LaAlO_3の超構造において高温超伝導体と類似した電子状態が出現することが理論的に予想されてから、精力的な研究が行われているLNO超薄膜について、その電子状態の膜厚依存性を測定した。その結果、理論予測とは異なり、LNO超薄膜は約3-5MLで金属から絶縁体に転移してしまうことが明らかになった。詳細な光電子スペクトルの解析から、この金属-絶縁体転移は表面・界面におけるバンド幅の減少により引き起こされていると結論づけた。
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