2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19684011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野瀬 佳文 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 講師 (80436526)
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Keywords | 熱ホール効果 / 異常ホール効果 / ベリー位相 / スキュー散乱 |
Research Abstract |
異常ホール効果の研究は古くから行われてきたが、最近のベリー位相理論の提案を契機に再び盛んに研究されている。異常ホール効果の起源は、散乱の影響に関して二つに分類される。一つは散乱に依存しない内因的起源で、ベリー位相理論で説明が可能なものである。もう一つは、スキュー散乱など電子の散乱による外因的起源である。本研究では、熱流のホール効果である熱ホール効果が非弾性散乱に敏感であることを利用して異常ホール効果の起源の検証を行うことを目的としている。昨年度はNiおよびNi/Cu合金では、熱ホール効果が非弾性散乱を受けておらずベリー位相誘起の内因的効果で説明できることを示した。今年度は、さらに抵抗が低いFeおよびそれにCo, Siなどの不純物をドープした試料の測定を行った。理論的には抵抗が低い領域ではむしろ外因的な起源が支配的になるとの予想があり、それの検証を行うことが目的である。まず、これらの試料の電気ホール伝導度が、ベリー位相理論と一致して温度依存しない振る舞いを示し、100K以下で低温に向けて急速に増大する振る舞いを観測した。また、この温度で熱伝導度の電気伝導度に対する割合(ローレンツ数)が急速に減少し、理論の予測どおり外因的な起源が支配的になったことを示した。さらに、SiドープしたFeでは、ローレンツ数が負の値を示すという異常を観測した。これは、熱流と電流の方向が逆になるという異常な振る舞いであるが、正方向の内因的な異常ホール伝導と負方向の外因的な異常ホール伝導の混合によって説明できることを明らかにした。
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