2009 Fiscal Year Annual Research Report
周波数時間分解分光法を用いた量子位相振幅情報の読み出し
Project/Area Number |
19684014
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
香月 浩之 Institute for Molecular Science, 光分子科学研究領域, 助教 (10390642)
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Keywords | コヒーレント制御 / 超高速分光 / 量子干渉 |
Research Abstract |
液体ヘリウムクライオスタット中に作成した固体パラ水素結晶をターゲットとして、中心波長600nmポンプ光と800nmのストークス光を用いて振動量子数v=1,回転量子数J=0の状態にRaman波束を作成した。v=1, J=0状態は固体中で幅3cm^<-1>程度のバンド構造をとるが、Raman選択則により、バンド中の最低エネルギー準位であるk=0の状態のみに遷移は起きる。ポンプ光とストークス光の両者を同軸に重ね合わせて、干渉計を透過させることにより、全く同じ時間間隔てを持った600nm,800nmのパルス対を作成した。これらの二つのパルス対によって、v=1,J=0状態のRaman波束を独立に二つ励起し、両者の量子干渉を作成することに成功した。重ね合わせ状態の観測には、560nmのプローブ光を別に作成して、CARSの手法を用いて、アンチストークス光をCCDカメラで観測した。τを変化させることによって、周期8fsのフリンジが観測された。これはv=0とv=1の振動準位間隔~4150cm^<-1>によく対応している。コヒーレンスの寿命は非常に長く、τを100ps周辺に設定しても60%以上のコントラストでフリンジパターンを観測することができた。さらに、参照レーザービームを用いてτをフィードバック制御により±10asの精度で安定化することに成功した。この手法を用いて、リアルタイムでRaman波束の干渉を強め合う条件、弱め合う条件で重ね合わせ、その結果を観測した。 これまで報告されてきた凝縮系における量子干渉の観測は量子井戸や量子ワイヤーのような、空間的に限定された領域に存在する励起状態を対象としていたが、今回の私の実験ではバルクな固体の非局在化した励起状態を対象とする量子干渉の制御・観測に初めて成功した。
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