Research Abstract |
本課題最終年度の本年度では,これまでの研究成果の取りまとめと公表を中心に取り組んだ.また,北海道の厚岸沖から南東に延びる観測定線Aライン上で2006~2008年に行った12の調査航海で収集した船底型ADCP(超音波ドップラー流速計)と,3100dbarまでのCTD(水温,塩分計)の観測資料の整理が終わったため,ADCPの実測流速値を基準とする地衡流量(ADCP基準地衡流量)を求めることができるようになり,3100dbarに無流面を仮定した地衡流量(3100dbar基準地衡流量)との比較も可能となった,親潮域および混合水域へ親潮水を輸送する親潮貫入の流動構造と流量変動を明らかにするため,これらの資料を用いて,親潮,親潮反転流,親潮貫入のADCP基準・3100dbar基準の地衡流量の時間変動を,表層-26.7σ_θ,26.7-27.0σ_θ,27.0-27.3σ_θの密度層に分けて調べた.親潮前線を100m深塩分33.6で定義し,Aライン上で親潮前線以北の南西向き流を親潮,北東向き流を親潮反転流,両者の差を親潮貫入と定義し,地衡流量を計算した結果,表層-27,3σ_θの平均ADCP基準流量は,親潮16Sv(3100dbar基準の117%),親潮反転流9Sv(同96%),親潮貫入7Sv(同167%)であった.ADCP基準によって親潮が強化され,親潮反転流が弱まることから,親潮域の3100m深付近に平均的には南西向きの流れが存在すると推測される.また,表層-26.7σ_θ層の親潮貫入流量は1月に南下流量が最大となる傾向が見られた一方,これ以外には明瞭な季節変動は見られなかった.東北近海の水塊指標と比較した結果,Aラインの表層-26,7σθ層の親潮貫入流量を観測することによって,三陸~常磐近海に現れる親潮系冷水の先端緯度の2か月後の南北偏を予測できることも分かった.
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