| Research Abstract |
本年度は,前年度に実験的に得られたイオン液体プラズマ中での電位構造を基に,DNA及びイオン液体自体の動的挙動を制御し,カーボンナノチューブ(CNT)へ照射することで内包実験を行った.
1. 熱処理により端を開口した単層(SWNT)及び二層(DWNT)カーボンナノチューブを気相-液相及び液相-固相界面に導入し,そこでのシース電場を活用してDNA及びイオン液体の照射を行った.これらのCNTを透過型電子顕微鏡により観測した結果,SWNT及びDWNTの両者にDNA及びイオン液体が内包されていることが明らかになった.
2. CNTのラマン分光解析から,内包させるDNAの塩基の種類によってスペクトルピーク強度が変化することを観測し,この現象がDNA塩基の酸化還元電位の差異に起因していることを明らかにした.また,イオン液体を内包させた場合,正イオンと負イオンではスペクトルピーク強度が大きく異なり,イオン液体とカーボンナノチューブとの電荷移動の差異が主な原因であることが分かった.
3. 界面におけるシース電場の強度を増大させることで,ラマンスペクトルのピーク強度の変化率の増大,すなわちDNA及びイオン液体の充填率が向上することを明らかにした.また,DNA及びイオン液体の照射時間を増加させることで同様に充填率を向上できることを実証した.一方,DNAの塩基数を変化させたところ,SWNTにおいては塩基数の増大で充填率が減少するが,内直径の大きいDWNTにおいては塩基数に依存せず,100塩基でも内包できることを示した.
4. DNA及びイオン液体を内包したCNTを電界効果型トランジスタのチャネルに用いてその電気特性を測定することで,内包させるDNA及びイオン液体の種類によって電気特性が敏感に変化することを発見し,この知見を利用して充填率の評価手法を確立した.
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