2008 Fiscal Year Annual Research Report
高強度X線レーザー照射によるクラスタープラズマの内殻電離ダイナミクス
Project/Area Number |
19684021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
難波 愼一 Hiroshima University, 大学院・工学研究科, 助教 (00343294)
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Keywords | X線レーザー / クラスター / 内殻電離 / 強結合プラズマ |
Research Abstract |
赤外から紫外までの超短パルス・高強度レーザーと物質との相互作用は、物理学・化学、工学や医学・生物などへの応用上の観点から各国において精力的に研究が行われている。しかしながらより短波長のレーザー、特にX線領域のコヒーレントレーザーと物質との相互作用はほとんど解明されてい来ないのが現状である。そこで、本研究の目的は、原子力機構関西研が開発した高強度プラズマ励起X線レーザー(波長 : 13.9 nm, 光子エネルギー : 89.2 eV,集光強度 : 1×10^<10> W/cm^2)とキセノンクラスターの相互作用を世界で初めて明らかにすることにある。昨年度までは、相互作用に伴って発生する内殻電離過程をイオン質量分析器で計測することにより、ダブルオージェ過程の遷移確率がクラスター内では非常に大きくなることを示した。この原因を探るため、本年度は飛行時間分解型の電子分光器を用いて電子エネルギー分布関数を計測し、クラスター中での内殻電離過程として何が支配的であるのかを調べた。その結果、大きなクラスターではオージェ過程に伴う電子スペクトル強度が非常に大きくなることが明らかとなった。このことは高強度場に晒されたクラスターが低温高密度の光電離強結合プラズマとなることにより、単一原子とは大きく異なった電子エネルギー構造となることを示唆している。この原因の一つは、クラスターでは多数の原子が近接して存在するため、X線により内殻電離された一部のイオンによるクーロンカにより周りの中性原子が影響を受け、これまでに観測されてこなかった現象が出現したことが挙げられる。現在、より詳細な解析を進めており、結果をまとめて英文誌へ投稿する予定である。
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