2009 Fiscal Year Annual Research Report
高強度X線レーザー照射によるクラスタープラズマの内殻電離ダイナミクス
Project/Area Number |
19684021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
難波 慎一 Hiroshima University, 大学院・工学研究科, 助教 (00343294)
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Keywords | X線レーザー / クラスター / 内殻電離 / 強結合プラズマ |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本原子力研究開発機構関西研究所が開発を進めてきたプラズマ励起軟X線レーザー(波長:13.9nm、光子エネルギー:89.2eV、パルス幅:~7ps、集光強度:10^<10>W/cm^2)と物質との相互作用を明らかにすることにある。特に、本研究ではターゲットとしてキセノン(Xe)クラスターを選択し、その相互作用を世界で初めて明らかにした。ここで重要なのは、波長13.9nmではXe 4d内殻電子を光電離する過程が最も大きな反応断面積を持つということである(最外殻電子を光電離する際の断面積は、内殻電離に比べて2桁程度小さい)。通常この内殻励起状態(Xe4d^1)は数フェムト秒のオーダーでオージェ脱励起するため、Xe^<2+>イオンが最も多く発生することが放射光の実験で報告されている。これまでのイオン飛行時間分解装置を用いた計測で、この軟X線レーザーをXeクラスターに照射すると、Xe^<3+>の生成効率が最も高くなることが判明している。このことは、内殻電離の脱励起過程としてダブルオージェ崩壊(光電子1個、オージェ電子2個が放出される)が支配的であることを意味している。 この原因を明らかにするために、今年度は相互作用を直接反映する電子のエネルギー分布を飛行時間分解法で観測した。その結果、強結合クラスタープラズマが発生していることを示唆するデータが得られた。このことは高密度効果により内殻電子のエネルギー構造が変化し、ダブルオージェ過程がエネルギー的に可能になったことを意味している。本研究により、高強度X線にさらされた物質中ではこれまでにない反応が発生することを突き止めることに成功した。
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