2008 Fiscal Year Annual Research Report
X線の小・中角散乱とリバースモンテカルロによるナノ空間内の分子混合状態の解明
Project/Area Number |
19685002
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
飯山 拓 Shinshu University, 理学部, 准教授 (30313828)
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Keywords | ナノ空間 / クラスター / 分子混合 / X線回折 / X線小角散乱 / リバースモンテカルロ / 多孔性固体 / ゆらぎ |
Research Abstract |
ミクロな構造情報の実測法であるX線小角散乱法(SAXS)およびX線回折法(XRD)に、計算機科学の一手法であるリバースモンテカルロ法(RMC)を組み合わせ、ナノ空間中の分子混合状態の決定法を確立するという目的を達成するために、昨年度立ち上げたXRD・SAXS測定装置を用いて、硫酸-水混合系を中心とした細孔内分子混合状態について検討した。多孔性固体として、細孔径の異なる複数の活性炭素繊維(ACF)を用い、その内部に閉じこめられた硫酸-水混合系について、細孔充填率などを変えながら詳細な測定を行った。その結果、細孔充填率が低い状態においても硫酸イオンはその周囲に水分子を伴っていることがわかった。また、水和直径よりも大きな細孔径を持つ空間内では、ACF表面が疎水的であるにもかかわらず、硫酸イオンは直接表面と接していない。これは硫酸イオンとその水和水分子が協同的にふるまう「水和クラスター」が細孔中で形成していることを示唆している。これは微小空間内での水和構造を理解する上で非常に重要な知見であるといえる。SAXSによる解析も開始し、細孔内で水分子が小さな分子クラスターを形成するために、溶媒としての性質が通常とは大きく異なっていることが示唆された。また細孔内の分子混合構造を詳細に検討するためのリバースモンテカルロ法のモデルの最適化を進めた。今後、SAXS測定によって得られるゆらぎの知見を加え、水溶液系以外の、細孔内に複数種の分子が同時に存在するナノ混合系についても検討を進める。
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