2009 Fiscal Year Annual Research Report
X線の小・中角散乱とリバースモンテカルロによるナノ空間内の分子混合状態の解明
Project/Area Number |
19685002
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
飯山 拓 Shinshu University, 理学部, 准教授 (30313828)
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Keywords | ナノ空間 / クラスター / 分子混合 / X線回折 / X線小角散乱 / リバースモンテカルロ / 多孔性固体 / ゆらぎ |
Research Abstract |
ミクロな構造情報の実測法であるX線小角散乱法(SAXS)およびX線回折法(XRD)に、計算機科学の一手法であるリバースモンテカルロ法(RMC)を組み合わせ、ナノ空間中の分子混合状態の決定法を確立することが本研究の目的である。目的達成のために、これまでの研究で立ち上げた吸着in situ XRD・SAXS測定装置の改良、これを用いた実験、および解析法の構築を行った。(1)X線測定装置は、用途に合わせた窓材の改善、透過法における試料・光軸の位置合わせ方法の確立、吸着系の温度管理の改善などを実験の進行に合わせ随時行い、研究初期に生じていた測定上の困難の多くを克服し、小・中角から広角領域にわたる吸着in situ X線散乱(回折)測定法をほぼ確立させた。前処理温度の高温対応についても現在取組中である。(2)ナノ空間内の分子混合の重要な応用例である電気二重層キャパシターに関し、細孔内の電解質水溶液の構造解析について昨年度に引き続き水溶液系の検討を、千葉大学と共同で有機溶媒系の検討を行った。ナノ空間中でイオンの水和、溶媒和構造がバルクと異なっていることが明らかとなった。水溶液(硫酸水溶液)については細孔径を変化させた際の構造変化についても詳細に検討を行った。(3)結晶性の多孔体であるゼオライトを用いて、RMC法の結晶性多孔質へ適用と、RMC法の吸着系への適用法の改善、確立を行った。数種のゼオライトに水、またはアルゴンを吸着させ、ピーク強度が変化すること、改善の余地はあるもののRMC法で吸着状態の検討が行えることを確認した。(4)大強度陽子加速器施設(J-Parc)の物質・生命科学実験施設を利用したナノ空間中の水素結合ネットワークの構造検討研究を開始した。中性子回折法により、水素の位置情報が得られることを確認した。 以上の検討により、ナノ空間中の分子混合系の実験的、解析的な記述法を大きく進展させることができた。
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