2009 Fiscal Year Annual Research Report
超高速電位ジャンプ法を用いた電子移動・電極反応ダイナミクスの赤外分光解析
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19685006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山方 啓 豊田工業大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (60321915)
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Keywords | 時間分解赤外分光 / 疎水性相互作用 / 反応ダイナミクス / 電気二重層 / 水和殻崩壊 / 疎水性水和殻 |
Research Abstract |
電極表面反応を理解するためには、表面吸着種の構造変化だけではなく、反応分子の吸着脱離に伴う界面水分子の構造変化も追跡する必要が有る。界面水分子は、大きな双極子モーメントを有するため、電極に蓄積された電荷と界面に偏析したイオンが形成する電気二重層の電場を遮蔽する誘電体として機能する。したがって、吸着分子の構造変化は界面水分子の構造を変化させ、電極電位を変化させる。我々はこれまでに、モデル分子としてCOが吸着したPt電極表面にレーザーパルスを照射してCOを脱離させると、空きサイトに水分子が吸着する際に電極電位が約70マイクロ秒かけて正側に電位がシフトすることを報告している。本研究では、界面水分子の構造変化の水和カチオン依存性を調べるため、H^+の他に親水性のLi^+や疎水性のTEA^+、TBA^+を用いて同様な実験を行った。その結果、親水性カチオンのLi^+の場合には、H^+を用いた既報告と同じように、CO脱離に伴う水分子の構造変化には70~100マイクロ秒かかるのに対して、疎水性イオンの場合には10ミリ秒以上かかることがわかった。表面増強赤外吸収分光法を用いて水和イオンの偏析に伴う界面水分子の構造変化を調べたところ、親水性イオンの場合には水素結合していないfree OHのバンドが強くなるのに対して、疎水性イオンの場合には、水素結合した水のバンド強度が増加した。つまり、疎水性カチオンが電極界面に偏析している状態では、親水性カチオンの場合に比べて界面の水分子の水素結合ネットワークが強くなることがわかった。したがって、疎水性カチオンの場合にはCOの脱離に伴う界面水分子の構造の再構築にミリ秒以上の長い時間がかかることが分かった。
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