2010 Fiscal Year Annual Research Report
Deal-Grove理論に代わる新しいシリコン熱酸化速度理論の構築とその応用
Project/Area Number |
19686005
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡邉 孝信 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (00367153)
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Keywords | 表面・界面 / 電気・電子材料 / ナノ構造形成・制御 / 分子動力学法 / 並列計算機 |
Research Abstract |
本年度は、シリコン熱酸化の新運動理論の成果を総括するとともに、同理論に基づいて開発したナノスケール半導体熱酸化シミュレータの応用研究に取り組んだ。 (1)熱酸化プロセスシミュレーションに関する新手法の開発 新しい熱酸化理論に基づき、界面の各部位における酸化種の到達確率をドロネー解析で見積もり酸化膜部を成長させる新手法を考案した。従来は完全に平坦な人工的な界面しか形成できなかったが、本手法により原子レベルの凹凸のあるより現実的な界面が再現可能となった。さらに、Si-O系、Ge-O系を超えた多元素混在系に幅広く適用できる化学反応分子動力学法を完成させ、その詳細を論文で公開した。 (2)ナノスケールシリコン構造体のモデリングおよびフォノン挙動の解析 本研究で形成した酸化被膜付きのSiナノワイヤ構造モデルを第一原理電子輸送計算に適用し、ナノワイヤSiにおける電子輸送の特徴を明らかにした。さらに、酸化膜層に挟まれたナノサイズのSi結晶層中における縦波光学フォノンの緩和時間を分子動力学シミュレーションで計算し、同フォノンの緩和時間がSi結晶層の厚さに依存性して変化することを明らかにした。縦波光学フォノンは群速度が小さく熱滞留の要因と考えられているが、ナノ構造中ではむしろ緩和しやすく、熱排出の妨げとはならないと考えられる。また、ナノサイズのSiチャネルを有するトランジスタの電気特性評価実験にも取り組み、その電流駆動能力がSiチャネルを覆う酸化膜厚に依存して変化することを突き止めた。以上の結果から、ナノサイズのSi結晶中では、酸化膜によって誘起されるSi結晶格子の歪みや界面の影響で、フォノンの挙動や電子輸送の様子がバルクとは大きく異なることが明らかとなった。
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