2009 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導ナノ細線構造による超高速単一光子検出技術の研究
Project/Area Number |
19686010
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 大治 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計測標準研究部門, 研究員 (90312991)
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Keywords | 超伝導材料 / 超精密計測 / 量子効率 / 超高速 / 低温検出器 / 単一光子 |
Research Abstract |
平成21年度は、GHz以上の繰り返し周波数で動作可能な単一光子検出技術として、従来用いられているNbNよりも小さなカイネティックインダクタンスを持つNbを超伝導ナノ細線の光受光素子の開発研究を推進させた。昨年度試作した線幅200nmを持つ光受光素子に可視域から通信波長帯の微弱光子を入射させてその応答特性を測定した。 その結果、応答時定数2nsを持つ高速信号を観測することに成功した。しかしながら、量子効率は通信波長帯で10^<-5>以下でありさらなる改善が必要であることが分かった。考察の結果、量子効率を向上させるためには、光子入射時に超伝導体に作成されるホットスポットに対して超伝導体の線幅を狭くかつ膜厚を薄くすることが有効であることがわかった。そこで、まず線幅に対しては、より微小な加工が可能な高電圧電子線描画装置を適用することで、50nm以下の線幅にまで狭めると共に、これを再現性良く作成できるプロセスを開発した。次に、膜厚に関しては、通信波長帯域まで光子検出のカットオフ波長を伸ばすためには、膜厚を5nm以下にする必要があることが計算の結果判明した。しかしながら、Nbを薄くすると超伝導転移温度が極端に低下する、あるいは超伝導特性が喪失するということが予備実験の結果から判明した。この原因について調査するため、X線光電子分光法により超伝導体表面状態を観察したところ、Nb表面がおよそ2nmの深さに渡って酸化されており、この酸化層の存在が超伝導特性の劣化に影響を与えていることが分かった。そこで、この酸化を抑えるための構造を考案し、これを超伝導ナノ細線に適用させたデバイスの試作を行った。その結果、Nb厚さ3nmにおいても5K以上で良好な超伝導転移を示す超薄膜超伝導ナノ細線の開発に成功した。このデバイスは、カットオフ波長は2μm以上を持つと予想され、産業上重要な通信波長帯での光子検出を可能とさせるためその意義は非常に大きいといえる。
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