2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール固液界面制御による高信頼エネルギーシステム材料設計技術の開発
Project/Area Number |
19686012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 研 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (40396461)
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Keywords | 応力腐食割れ / 反応ダイナミクス / 量子分子動力学法 |
Research Abstract |
エネルギー機器用構造材料のオーステナイト合金,Ni基合金の応力腐食割れ(SCC)現象のメカニズムを検討する目的で,量子分子動力学法を用いて原子拡散を伴う固液界面反応ダイナミクス解析を行った.19年度は,応力依存の異方性拡散現象,応力,ひずみによって誘起・加速される化学反応現象に着目し,Fe単体,Fe-Cr,Fe-Ni,Fe-Cr-Ni合金系の高温水(288℃)環境における合金表面反応のひずみ依存性について検討した.高温水中におけるFe系合金表面の主要な化学反応としてH_20の分解と酸化膜の生成が挙げられる.そこで,ひずみを負荷した合金表面と無ひずみの合金表面について,H_20の分解反応及び分解後に発生する酸素,水素の拡散現象について比較を行った.シミュレーション中に合金表面で分解するH_20分子の数を調べたところ,その数はひずみを負荷した表面で常に多かったことから,ひずみにより分解反応が促進される可能性が示された.H_20分解後のOH及び0原子は合金内部に拡散し,この酸素種の拡散によって金属原子,特にFeが合金外部へ押し出され溶解する様子が観察された.酸素及び水素の拡散現象について平均二乗変位の時間変化から検討したところ,ひずみを負荷した表面で酸素の平均二乗変位が大きく,ひずみによる酸素の増速拡散が確認された.酸素拡散のひずみ依存性について,合金組成による違いを検討したところ,Crを含んだモデルではCrが酸素のトラップサイトとして働き酸素の内部拡散を妨げるため,ひずみによる影響が小さいことがわかった.以上の解析結果より,ひずみによる表面反応及び内部拡散の促進,増速現象がSCCメカニズムの重要な因子であると考えられる.またこの観点から,酸素を含めた金属内部の原子の移動現象を低減し,かつひずみ感受性が低い元素の添加が耐SCC性向上に有効であると考えられる.
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Research Products
(1 results)