2008 Fiscal Year Annual Research Report
土壌水分量と傾斜変位に着目した低コストで簡便な豪雨時の斜面監視システムの開発
Project/Area Number |
19686031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内村 太郎 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 准教授 (60292885)
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Keywords | 表層崩壊 / 斜面災害 / 防災対策 / 警報システム / 表層すべり |
Research Abstract |
我が国で発生する斜面災害の大多数は、小規模かつ多発的な表層すべりである。このような小規模斜面全てに、擁壁やアンカーなどのハード対策を行うことは、費用対効果の点から困難である。本研究では、斜面災害の前兆を捉えてリスクを評価する、安価で使い勝手の良い警報システムの一連の開発に取り組んだ。 計測が比較的容易な、斜面の表面に設置した傾斜計の傾斜変位と土壌水分量を常時監視し、無線によりリアルタイムでデータを収集するセンサーユニットとデータ中継装置を開発した。安価で、小型、省電力のMEMSセンサーを採用し、電子回路も消費電力を抑える改良を重ねた結果、コストが従来品より1桁安く、乾電池で3年近く動作し、小型で20分程度で設置できるセンサーユニットを開発した。広い斜面に適用するために、通信距離は300〜600mで、複数のユニットで中継することで数kmの範囲を監視できる。このユニットは既に工場生産できる段階にあり、神戸・六甲の砂防工事斜面、岩手宮城内陸地震で被災した荒砥沢ダムの斜面、中国四川省の三峡ダム周辺の地すべり地域で、試験運用を開始した。 また、開発した装置では、斜面の変位の監視に一般に用いられている伸縮計による絶対変位の測定のかわりに、傾斜計で地表面の回転変位を測ることで、設置運用の手間とコストを省いたが、伸縮計による絶対変位計測を傾斜計による回転変位計測で置き換えるためには、両者の関係、違いを理解する必要がある。大型模型斜面の人工降雨崩壊実験で、斜面の傾斜変位と絶対変位を測定し、比較を行った。均一の緩い砂質斜面では、伸縮計による絶対変位の測定では、斜面上部の測定でも、斜面下部の異常を検知できた。これに対し、傾斜計による地表面の回転変位は、斜面の崩壊が比較的近くまで進行してきたことを検知する傾向があり、両者は異なる挙動を示した。
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Research Products
(5 results)