Research Abstract |
いわゆる非構造壁は,一般に建物の耐震性能に寄与しない存在として扱われる.しかし,過去の地震被害や実験研究は,非構造壁が少なからず建物の性能に影響することを示してきた.そこで,本研究では,非構造壁による建物の耐震性能の向上効果に着目し,その真の性能を建物の付加的な性能として積極的に利用する新しい技術の開発を試みる.具体的には,インターロッキングブロックにより面外への転倒防止機構を確保した組積造ブロック壁を対象に,本構造を水平力抵抗性能,鉛直力抵抗性能,あるいはその中間の性能を有する耐震デバイスとして選択的に利用する方法を構築する. 平成20年度までに,非構造のインターロッキング壁の構成要素として,セメント系ブロック,木質ブロックを適用することで,それぞれ,水平力抵抗性能,鉛直力抵抗性能を非構造壁に付与できることを実験的に確認した.この知見を受けて,平成21年度は,2007年インドネシア・スマトラ島南部沖地震により被災した鉄筋コンクリート造建物を対象に,レンガ(上記のセメント系ブロックとおよそ同様の効果を示す)および木質ブロックによる非構造壁の水平力抵抗性能,鉛直力抵抗性を簡便に模擬して,これらを同建物に適用した場合の耐震性能の向上効果を解析的に検討した.模擬地震動を用いて建物の倒壊に対するリスク解析を行った結果,建物にレンガ壁による水平力抵抗性能を付与した場合,建物の水平耐力が向上する結果,倒壊限界も向上するが,その向上程度は限定的であること,一方,木質ブロック壁による鉛直力抵抗性能を付与した場合,主体架構の損傷限界は向上しないが,建物の倒壊限界は著しく向上することを確認した。 また,最終年度は,本研究で新たに開発した木質ブロックによるインターロッキング壁の面外方向の変形性能についても実験的に検証し,その高い変形性能(変形角10%以上)を実証した.
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