Research Abstract |
海岸クロマツ林の外生菌根菌群集を明らかにするための調査手法を確立するため,本年度は細根,外生菌根の垂直分布を調べるとともに,外生菌根を形成する菌種を調べた.海岸クロマツ林1ケ所に調査地を設定し,単木的に生育するクロマツ成木5本を調査木とした.各調査木の樹幹から160cm離れた海側の地点において土壌断面を作成し,4段階の土壌深;0-15cm,30-45cm,60-75cm,90-105cmから土壌ブロック(横×奥行き×深さ:10×10×15cm)を採取した.各土壌ブロック200mlから3種類の篩(上から2.0,1.0,0.5mm)を用いてクロマツ根系を抽出し,細根部分を実体顕微鏡下で観察した.細根は外観から非菌根と菌根に大別し,後者はさらに顕微鏡を用いた菌根の色や菌鞘表面構造にもとづく菌根タイプに大別した.各菌根タイプの一部は核リボソームDNAのITS領域を対象としたRFLP解析とDNA塩基配列解析に用いた.さらに,各土壌ブロック中に含まれる黒色菌核を抽出するため,土壌20mlを篩0.5mmに流水中で通過させた後,篩に残った土壌から菌核を拾い出した.その結果,形態類別に供試した細根は1719根端,そのうち98.8%が外生菌根であった.土壌深度に伴い細根数は減少した.顕微鏡によりクロマツ細根に形成された菌根は7タイプに類別された.そのうち,形態的特徴からCenococcum geophilum, Clavrinaceae sp.1, DNA塩基配列からベニタケ属やTrichophaea sp.1の定着が示唆された.深度とともにSimpson指数,RFLPタイプ数は減少傾向を示したが,Trichopaea sp., C. geophilumは,どの深度においても出現した.菌核量は細根数と同様な傾向を示した.以上から,調査した海岸クロマツ林における外生菌根菌群集は単調であると考えられた.細根と外生菌根タイプの垂直分布を考慮すると,外生菌根菌の群集構造を把握するためには,表層の0-15cmもしくは0-30cmまでを対象にすることが有効であると推察された.
|