2008 Fiscal Year Annual Research Report
海岸クロマツ林における外生菌根菌群集の遷移機構と実生更新に果たす菌根機能の解明
Project/Area Number |
19688008
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松田 陽介 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 助教 (30324552)
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Keywords | 海岸マツ林 / 外生菌根 / 外生菌根菌 / Cenococcum |
Research Abstract |
本年度は, 地理的に異なる海岸クロマツ林の外生菌根菌群集構造を明らかにするため, 太平洋側と日本海側のクロマツ林分の外生菌根群集を調べた。調査は, 三重県南牟婁郡紀宝町と石川県能美市山口町のクロマツ林で行ない, 10m 10mの方形プロットを各1ヶ所設定した。プロット内から土壌コア(直径3cm深さ30cm)を計30個得て, そこからクロマツ細根をすべて回収した。顕微鏡観察にもとづき外生菌根の形態タイプ分けをしてから, 核rDNAのITS領域を対象としたAlu I とHinf IによるRFLP解析を行った。ただし, Cenococcum geophilum菌根は顕微鏡観察のみで同定を行った。識別されたRFLPタイプにもとづき外生菌根菌種の多様性をS_<obs>, Simpson指数(1/D)などにより算出した。紀宝町のプロットから回収されたクロマツ細根は3684根端であり, 全てが外生菌根化していた。それらは18タイプに識別され, 外生菌根数が多かったのはRFLPタイプ1(31.9%), C. geoqhilum (25.4%)であった。出現頻度が高かったのはC. geophilum(90.0%), RFLPタイプ1(40.0%)であった。S_<obs>によるRFLPタイプ数は19.0タイプと推定され, Simpson指数は4.9であった。山口町のプロットから回収されたクロマツ細根は2947根端であり, 外生菌根形成率は99.9%であった。それらは16タイプに識別され, 外生菌根数はC. geophilum(69.5%), RFLPタイプ5(11.7%)の順に高かった。出現頻度が高かったのはC. gephilum(96.7%), RFLPタイプ5(40.0%)であった。S_<obs>によるRFLPタイプ数は16.2タイプと推定され, Simpson指数は1.9であった。以上より, 海岸クロマツ林の0.01 haプロットにおいて20種程度の外生菌根菌が生息すると考えられた。その中でC. geophilumは両プロットで外生菌根数, 出現頻度ともに優占していたことから, 土壌中で優占する菌種の1つと考えられた。RFLPタイプの出現頻度分布は調査地間で類似しており, Simpson指数の値も考慮すると海岸クロマツ林に生息する外生菌根菌の群集構造は単純なものであると推察された。
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Research Products
(8 results)