2009 Fiscal Year Annual Research Report
猟区制度は次世代型野生動物管理の有効なシステムとなりうるか?
Project/Area Number |
19688013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 友紀子 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 研究員 (60374245)
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Keywords | 野生動物管理 / 猟区制度 / エゾシカ / 生態学 / 狩猟 / 繁殖特性 / 電波発信器 |
Research Abstract |
H21年度は猟期が延長されたため(H22.4.15まで)、調査終了時点はまだ猟期中であるが、H22.3までに捕獲された133頭から個体データを収集した。また、電波発信器個体の追跡および膣テレメを用いた新生子の捕獲を行った。それらをまとめ、猟区のシカ個体群の状態を明らかにし、猟区におけるエゾシカ管理指針を検討した。 1.繁殖情報;1歳以上のメス90頭中87頭の個体(96.7%)が妊娠していた。残り3頭は11月に捕獲された個体で、胚や胎子は確認できなかったが、黄体が1つ確認されたため発情周期中の可能性があり、受胎が遅い個体と考えられた。つまり、妊娠率はほぼ100%であった。 2.死亡情報:膣テレメを用いて捕獲した新生子について、1年目の春の生存を自動撮影装置により確認した。VITと自動撮影装置の組み合わせの応用により、新生子の初期死亡情報が得られることが明らかになった。電波発信器追跡個体(成獣)はすべて期間を通して生存していた。 3.移出入情報;H20に5頭、H21に8頭の計13頭(内1頭オス)に電波発信器を装着し、追跡を行った。その結果、1年を通して猟区内に生息していた個体が10頭、季節的に猟区内外を行き来していた個体が3頭であった。本猟区のシカの行動圏は比較的狭いといえる。また移動経路から、本猟区のシカの季節移動は分散行動と関係している可能性が考えられた。 4.個体群の状況:3年間のライトセンサス等の結果から、個体数は増加傾向にあると考えられた。体格の小型化は見られず、妊娠率も高いことから、今後個体数のさらなる増加が予想される。シカの行動圏が狭いことから、猟区をより細かいユニットに区切った管理手法を検討した方が良い。また、猟区におけるガイドハンティングだけでは、個体数管理を行うのは困難であり、個体数調整を目的とした捕獲を行う必要があると考えられた。
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