2009 Fiscal Year Annual Research Report
不整脈トリガー間クロストークの機能的・計算科学的アプローチによる統合的解析
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19689006
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒川 洵子 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 准教授 (40396982)
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Keywords | 不整脈 / 性ホルモン / イオンチャネル / シミュレーション / 交感神経 / 非ゲノム作用 / 薬物性QT延長 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
不整脈の予防・薬物安全性におけるオーダーメイド医療の土台作りを長期的目標とし、複数の不整脈トリガー因子による統合的心筋イオンチャネル制御の分子機構を解明すること、得られたデータを基にして高精度かつ高予測性の統合的心臓電気活動シミュレーションモデルを構築すること、の2点の達成を目指した。交感神経刺激と性ホルモンという不整脈トリガー因子のクロストークについて解析したところ、性ホルモン受容体の非ゲノム経路刺激によるNO産生から惹起されるcGMP濃度上昇が、ホスホジエステラーゼ2(PDE2)を介して、交感神経刺激によるcAMP濃度上昇を抑制しL型カルシウムチャネルを調節することを見出した。一方、そのシグナルクロストークの影響は受けず、産生されたNOが直接カリウムチャネルの蛋白ニトロソ化して制御する機構も見出した。さらに、エストロゲンが性ホルモン受容体を介さずにQT延長をもたらす分子機構を、性ホルモンとチャネルの結合性を調べる実験により明らかにした。以上の性ホルモンの急性作用における定量的データをシミュレーションに取り入れたモデルを作成した。このモデルを用いて、男性に比べて女性の方が、臨床的に不整脈のトリガーとなりうるペーシングと薬物により不整脈が起こりやすい状態になることを示すことに成功し、国際誌に発表した。 以上結果は薬物の不整脈毒性を予測するモデルとしての利用が期待され、動物実験、細胞実験レベルで明らかとなったメカニズムと得られた定量的データをin silico解析することに成功したという点も意義深い。さらに、QT延長症候群をはじめ明らかに性差があることが臨床上指摘されている不整脈疾患の一部をこのモデルを使用して評価することが可能となり、生物学的性差を考慮した心臓毒性評価系の基盤となることが期待される。
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Research Products
(7 results)