2009 Fiscal Year Annual Research Report
正常並びに病態時における小腸及び腎薬物トランスポータの転写制御機構の解明
Project/Area Number |
19689013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺田 智祐 Kyoto University, 医学研究科, 副薬剤部長 (10324641)
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Keywords | 薬物トランスポータ / 転写制御 / 小腸 / 腎臓 / 生活習慣病 / プロモーター解析 / シスエレメント / トランス因子 |
Research Abstract |
1) Matel遺伝子欠損動物を用いた糖尿病治療薬メトホルミンの体内動態解析 MATEは腎臓の近位尿細管上皮細胞の刷子縁膜に局在し、糖尿病治療薬メトホルミン等のカチオン性薬物の腎排泄において重要な役割を担っている。Mate1の発現が消失あるいは低下した時を想定して、Mate1遺伝子欠損動物を新たに作成し、メトホルミンの体内動態解析を行った。Mate1遺伝子欠損動物は正常に発育した。発現解析の結果、他の有機カチオントランスポータファミリーの発現に変化は認められなかった。さらに、メトホルミンの体内動態解析を行ったところ、Mate1遺伝子欠損動物のメトホルミン血中濃度及び腎組織中濃度は野生型マウスと比較して顕著に上昇した。また、メトホルミン投与60分後までの尿中排泄量は、Mate1遺伝子欠損動物において50%減少した。さらに、Mate1遺伝子欠損動物では、メトホルミンの分泌クリアランスは1/10に低下した。従って、Mate1がカチオン性薬物メトホルミンの腎排泄過程に重要な役割を果していることが、in vivo系において初めて明らかにされた。 2) 糖尿病患者におけるメトホルミンのPK/PD/PG解析 メトホルミン服用中の糖尿病患者48名を対象に、経時的な血中濃度測定、およびMATE、OCT2の一塩基多型(SNPs)を調べた。また、メトホルミンの見かけのクリアランス(CL/F)を算出し、これらSNPsとの関連について検討した。本研究対象患者群においてMATE1、MATE2-K、OCT2のSNPsはいずれもヘテロ型であり、野生型とヘテロ型の変異を有する患者のメトホルミンCL/Fに有意な差は認められなかった。さらに、野生型、ヘテロ欠損型Mate1ノックアウトマウスを用いてMATE1のヘテロ型の変異がメトホルミンのクリアランスに与える影響について検証した。その結果、Mate1ヘテロ欠損型マウスと野生型マウスにおけるメトホルミンのクリアランスに有意な差は認められなかった。以上の結果から、MATEのヘテロ型の変異は、メトホルミンのクリアランスに影響を与えないことが示された。
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