2009 Fiscal Year Annual Research Report
α-Galcerを用いたNKT細胞による新規抗癌治療法および肝硬変治療法の開発
Project/Area Number |
19689027
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳澤 和彦 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (90431692)
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Keywords | NKT細胞 / 腫瘍免疫 / 肝硬変 / 癌転移抑制 |
Research Abstract |
昨年までの研究結果をふまえ今年度は以下のことを行った.近年,我々が着目しているCD11b陽性Gr1陽性の細胞集団が腫瘍の血管新生に関与している可能性に言及した報告(Farbod S.et.al.2007.Nature)や,免疫制御性T細胞におけるFoxp3の発現の重要性の報告(Amit A.et.al.2007.Nature Immunol.)が散見されているため,担癌患者および健常人のVEGFやFOXP3の発現を解析した.担癌患者において増加しているCD11b陽性Gr1陽性の細胞集団には,健常人のそれに比べてVEGFが発現している傾向を認めた.しかしながら,FOXP3に関しては,担癌患者と健常人各々において有意な発現は認められなかった.さらに,マウスにおいて,抗VEGF抗体がCD11b陽性Gr1陽性の細胞集団を減少させるとの報告がなされたため,大腸癌に対する分子標的治療(アバスチンなど)を行っている患者におけるCD33陽性CD14陰性CD11b陽性細胞集団の数と割合を治療前と比較検討した.サンプル数がやや少ないながらも,分子標的薬(抗VEGF抗体)使用前の担癌患者におけるCD33陽性CD14陰性CD11b陽性細胞集団の数は,分子標的薬使用後に減少する傾向を認めた.しかしながらこれらの担癌患者群は同時に白金系抗癌剤や代謝拮抗剤系抗癌剤を同時投与され,白血球系全体の減少も来していることが多く,今後抗VEGF抗体単独の影響がどの程度のものかは検討の余地があると考えられた.これらの結果,我々が報告しているATRAやレチノイン酸,G-CSFに加えて,すでに大腸癌治療に使用されている抗VEGF抗体が担癌患者の免疫抑制状態を軽減することに寄与する可能性があることがわかった.この成果は,NKT細胞を用いた臨床試験を開始していくうえで重要な基礎研究結果となると思われ,さらには,大腸癌をはじめとした様々な癌腫への治療の選択肢が増やせるものと考える.
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