2008 Fiscal Year Annual Research Report
内在性神経幹細胞および自己修復能に着目した脊髄損傷の新規治療法開発
Project/Area Number |
19689031
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 誠司 Kyushu University, 医学研究院, 特任准教授 (30448435)
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Keywords | 脳・神経 / 脊髄損傷 / 再生医学 |
Research Abstract |
脳や脊髄などの中枢神経系は多種多様な細胞が複雑なネットワークを構築して存在しており、外傷後に特定の細胞のみの機能を解析することは困難であった。実際に中枢神経系の分子生物学的研究は免疫組織化学あるいはin situハイブリダイゼーションによる解析が主流であるし、脊髄損傷後の遺伝子発現変化の報告は" 組織全体" を用いた解析のみであり、どの細胞がどのような遺伝子を発現して役割を担っているのかは殆ど明らかにされていない。我々は先行研究により、損傷亜急性期の運動機能回復に於いて、反応性アストロサイトによる損傷脊髄の修復が重要であることを報告が、反応性アストロサイトを選択的に採取解析する手法が無いため、その機能解析は不十分であった。セルソーターを用いた反応性アストロサイトのソーティングも試みられているが、中枢神経系の組織においては、胎児細胞以外は単一細胞レベルへの単離が困難であることに加え、細胞脆弱性やマーカーとしての細胞表面抗原がほとんど存在しないことから解析は殆ど不可能であった。そこで本研究では、反応性アストロサイトなどの目的とする特定の細胞の"核"のみを生かしたまま選択的に抽出し、経時的な細胞増殖の推移や発現遺伝子の網羅的解析を目指した、新しい解析技術開発を試みている。今年度の成果として、我々は脱核剤とホモジナイザーを併用した物理的化学的刺激により、脳脊髄組織から高純度に核を抽出することに成功した。この方法は、従来の細胞骨格マーカーや細胞形態からのニューロン・グリア分類ではなく、核内発現蛋白や遺伝子を指標として分類する点も非常に独創的であると考えている。さらに、近年次世代大規模シークエンス技術が急速な発展を見せているため、これを応用することにより核内のすべての発現遺伝子の種類と量的関係を明らかにすることが可能である。今後、上衣細胞や運動ニューロンといった、中枢神経系を構成する重要な細胞でありながらこれまで選択的な解析が困難であった細胞群についても採取分画や発現遺伝子解析が可能であるかを検討する。最終的には脊髄損傷後の組織修復に重要な役割を果たす遺伝子群を同定し、新規の中枢神経外傷治療法開発に繋げたいと考えている。
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