Research Abstract |
本研究は,課題名が「回路設計理論の安全な計算への実用的応用」であり,安全な計算とは,何人かのプレーヤーがいて,各プレーヤーは自分だけに秘密な入力を持っているとき,それぞれのプレーヤーの入力は秘密にしたままで,ある目的とする関数を計算し,その出力結果だけを全員のプレーヤーで知ることができるようなプロトコルを設計する問題である。特に,回路設計理論におけるさまざまな優れた既知の結果・手法を適用することにより,実用上効率的な暗号プロトコルの開発を目指している。 昨年度までの研究期間において,多値2入力論理関数に対する論理積項を排他的論理和で結んだESOP展開について,ブール行列の階段化とESOP表現の簡単化との関連性の発見により,ESOP表現の最小化を実現する多項式時間アルゴリズムを開発することに成功している。ESOPが適用できるような,安全な計算のための暗号プロトコルは既に知られており,この最小化アルゴリズムの存在は,暗号プロトコルの最適化に直結する。本年度は,これらの成果を国際会議で公表するとともに,その論文をJournal of Multiple-Valued Logic and Soft Computing誌に掲載することができた。 また,回路設計理論の基本演算とも言うべき論理和や排他的論理和に対して,基礎的通信モデルにおいて,安全な計算という問題が持つ本質的な難しさや実現可能性を解析した。具体的には,その通信モデルの下で,論理和や排他的論理和に対する安全な計算のために必要なコストの削減に成功している。この成果を国際会議において公表した。
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