| Research Abstract |
自然災害への取り組みの1つに災害救助シミュレータの実現がある.これは被災地のシミュレーションを通して,自然災害の被害予測や,被害対策などへの利用が期待されている.このシミュレータでは,適用する地域に応じて地図や災害救助エージェントの能力を自由に変更できなくてはならない.そのために「マルチエージェントシステムの協調行動と地図(環境)の関係の明確化」を目指す.平成21年度の計画に従って(1)道路ネットワークの特徴に着目した条件で協調行動を分析する,(2)道路ネットワークの特徴を用いたエージェントの協調行動結果予測について検討する,(3)地図の特徴として建物は位置の構造について検討する,の3点を実施した.
(1)は,従来のシミュレーション設定において,用いる地図で予想される災害被害を地域の防災マップから決定していたものを,面積比一定とすることで,道路ネットワークの特徴のみに注目するものである.その結果,道路ネットワークと協調行動に関連があるとの結果が得られた.また(1)で得られた道路ネットワークと協調行動の関係を表す数式を用いて,エージェントの協調行動を予測した結果,概ね予測できたものの,大きく予測が外れる地図が存在した.これらの地図はすべて郊外であったことから,地図をあらかじめ分類してから再度,関連性を分析した.その結果,地図は大きく2つに分類され,片方の分類では予測の精度が向上した.しかし残る1つの分類では,これまでよりも予測ができなくなり,更に検討を進める必要がある.(3)については,研究を実施する上での道具作りと,その応用である.地図作成ツールは当初の予定を少し変更し,情報の取り扱いやすい国土地理院の基盤地図情報に基づくツールとし,現在も開発を続けている.研究結果は随時,災害救助シミュレーションを実施しているRoboCupRescueプロジェクトに提供しており,プロジェクトの発展にも寄与している.
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