Research Abstract |
昨年度の研究成果をさらに掘り下げ, 次の研究を行った. 個体間の相互作用で変動する適応度地形上における進化と学習の相互作用を理解するため, コミュニケーション能力の進化を考え, 前年度の凸凹した地形おける表現型可塑性の進化モデルの拡張を行った. 具体的には, 各個体が信号の送信または受信を行った際に生じるコミュニケーションの適応性のレベルが, それぞれの立場において用いる形質の構成によって決まり, 高いレベルほど形質間の相互作用の影響が大きいものとした上で, 学習はレベルの可塑的な変化をもたらすものとした. あるレベルに収束した集団からの進化実験を行ったところ, 学習が無い場合にはより適応的なレベルを持った個体が突然変異により生じても, 理解する相手がいないために集団中に侵入できないことが確認された. 一方, 学習能力の進化を導入した場合には, 学習によってレベルを使い分ける個体が生じることで, より適応度の高いコミュニケーションを行う個体が次第に集団中に広がっていくことが判明した. さらに. 表現型可塑性と関連の深い人工発生の解析手法や言語能力の進化とボールドウィン効果, 動的な適応度地形としての性選択に基づく進化, 自律分散系における集団レベルでの可塑性としてのセルオートマトンと外界との相互作用についても成果発表・検討を行った. 前年度における, 進化と学習, ニッチ構築間の相互作用に関する知見も総合し, 複雑かつ動的な適応度地形上の進化を理解する上では, 表現型可塑性とその進化の役割が極めて重要であることが明確に示された. また, コミュニケーション能力の進化など, 自律分散的な工学システへの応用に関しても, 重要な示唆を与えることができた.
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