Research Abstract |
本年度の主な目的は, 前年度に作成した計測装置を用いて, 被験者や実験条件を変え, 多くのデータを蓄積し・解析することにより, 歩行と足底触覚刺激の関係を探ることであった. また, 皮膚変形および内部変形を数値解析する方法を確立することであった. よって, 以下のような計画で進めた. 1. 足底触覚刺激が歩行運動に及ぼす影響の解明 : 前年度開発した, 足底皮膚変形計測装置を用いて, 冷却前後の歩行開始1歩目の足底皮膚変形, 及び, 定常歩行時の足底皮膚変形を計測した. 冷却前後で, 接触面積の変化, 接触面積の推移の変化, つま先離床皮膚変形量の変化が観測された. 計測結果から触覚刺激の減少が歩行運動に影響を与えることが示唆された. 2. 足底の皮膚変形・内部変形を含めた数値解析モデルの開発 : 生体生理学の知見より得られた足の骨, 表皮, 真皮の物理的パラメータを使用し, さらに足の医療用断面撮像写真データより, 皮膚・骨・腱などを考慮した足の3次元有限要素モデルの開発を行った. 皮膚変形は大変形と接触解析を含めるため, 有限変形理論に基づく弾性有限要素法を用いた. これにより, 足底の変形シミュレーションが可能となった. 本研究では, 一般的に普及した歩行解析の方法で計測できない足底の触覚刺激や皮膚変形に着目し, 足底の皮膚変形が計測可能な装置を開発し, 実験的に足底触覚刺激が歩行に及ぼす影響を確認した. また, 有限要素法を応用して足底変形のシミュレーションが可能となった. 本研究により, 足底触覚刺激が歩行動作に影響を与えることが示唆されたことは, 歩行動作解析の研究に新しい視点をもたらすものである. また, 従来得られなかった情報を基に歩行解析が可能となり, 歩行メカニズムにおいて新たな知見を得られたことは非常に意義が大きく, 今後の新しい歩行動作解析の発展への貢献が期待される.
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