2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトにやすらぎを与える心地よい音が示す心身効果の本能的脳機能メカニズムの解明
Project/Area Number |
19700201
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
首藤 文洋 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (10326837)
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Keywords | 聴覚 / 音 / 音楽 / 本能 / NIRS / 光トポグラフィー / 神経伝達物質 / セロトニン |
Research Abstract |
ヒト被験者を対象とした前頭葉活動の光トポグラフィー計測では, 印象評価アンケートでは前年度の研究で「気分が良い」「覚醒感がある」とされた川のせせらぎ, 波の音, モーツアルトのピアノソナタK448を音刺激として(1)ホワイトノイズ呈示(20秒)(2)無音状態(30秒)(3)音刺激呈示(1分)の順に繰り返して65dB前後の強さで提示した. これらの音刺激では提示中の前頭葉酸素ヘモグロビン量の変動幅が小さい傾向が見られた。この光トポグラフィー計測では刺激の提示時間と被験者が刺激の影響から回復する時間とタスクを有効に設定したシーケンス刺激によるIntegral解析法が適切であることがわかった. また, マウスを使った音刺激提示による脳内物質量変化の計測実験では, 防音箱中に設置したスピーカーからマウスの活動が活発となる暗期の間に65dB前後の強さで音刺激を7日間提示した後, 摘出した脳組織を高速液体クロマトグラフィー法でドーパミン・ノルアドレナリンおよびセロトニンとそれらの代謝物の含有量を計測した。その結果, 音刺激を呈示しなかった群と比べて川のせせらぎを呈示した群で大脳皮質前部と大脳基底核でセロトニン量が、脳幹ではノルアドレナリン量が増加しているなど、提示した音刺激によって単位組織重量あたりの脳内モノアミン含有量に差異があることが認められた。モーツアルトのピアノソナタK488では脳幹のノルアドレナリン量が増加していた。以上のことをまとめると被験者は音刺激提示中の前頭葉酸素ヘモグロビン量の変動が相対的に小さい音を「気分がよい音」と評価したと考えられ, 特に川のせせらぎの音はマウスでは情動に深く関与するセロトニンやノルアドレナリンの分泌に影響していた。これらのことは音刺激の効果が本能システムにはたらくことで心地よさを感じさせる脳機能メカニズムが存在していることを示唆する。
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Research Products
(3 results)