Research Abstract |
ユーザの発言をもとにユーザが望むチャットの雰囲気を推測し,ユーザの分身であるCGキャラクタが表出する表情や視線などといった非言語情報を,その雰囲気が再現されるよう自動的に制御することを目標として複数の調査を行い,以下の成果が得られた. 1. チャットで出現する典型的な雰囲気の調査を行ったところ,歓喜・愛慕,悲嘆,驚嘆の各表現が全体の73%を占めた.また,笑顔が多いと場が和むという理由で特に多く使用する傾向が見られた.以上のことから,感情を伝え合うチャットにおいては,この3種の表現は必須であることがわかった. 2. 顔文字は対話者らの心情を表現する重要な手段である.そのため,チャットにおいて頻出する顔文字の収集,顔文字と感情語との対応と解釈の違いについて分析を行った.その結果,以下の知見が得られた. (1) 顔文字は,ほぼ同じ意味傾向で使われるものと,数種類の意味を含み文脈と使い手により大きく解釈が分かれるものとに二分された. (2) 同様の感情カテゴリに分類される顔文字の中にも,その感情を表す強弱の違いが存在していた.この結果は,キャラクタに表出させる非言語情報の制御において重要な手掛かりとなる. (3) 選択される感情カテゴリは個人ごとに偏りがあった.このような個人の傾向を抽出することにより,キャラクタへの適用に際して,一定のパターンとして記述できる可能性がある. (4) 喜び,楽しみ,満足といった友好的表現が選択されやすく,これらの感情表現はチャットにおいて不可欠であることがわかった. 3. 社会心理学,行動科学などの分野において非言語情報間に見られる相互依存性に関する研究調査を行った.この調査により,新たに,まばたき,腕を使ったジェスチャー,声の抑揚,発声のタイミングなどの間にも相関がみられることが確かめられた.これらの情報をどのようにキャラクタの動作および雰囲気と結びつけるかが,次年度における課題である.
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