2007 Fiscal Year Annual Research Report
全ての物理現象のシミュレーションを目指した挑戦的研究
Project/Area Number |
19700216
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山下 和也 University of Toyama, 理工学研究部(工学), 助手 (30436802)
|
Keywords | 雪 / 結晶 / 類似パターン / セルオートマトン |
Research Abstract |
2002年5月,S.Wolframは著書「A New Kind of Science」を出版し,世界の注目を集めた.この著書で述べられているWolframの理論は,「自然界で複雑と見える現象は全て,単純な法則に基づく計算の繰り返しによって成り立っている.」というものであり,物理学や生物学,工学から経済学に至るまで,あらゆる分野でその基本原理の再検討をせまるものである. Wolframの理論の基礎をなすものがセルオートマトンであり,言い換えれば,「自然界で複雑と見える現象は全て,セルオートマトンでシミュレーション可能である.」ということになる. 本研究では,物理現象の一つである雪の結晶に注目し,雪の結晶成長シミュレーションにおけるセルオートマトンの遷移関数の物理的な意味を解明することを目的としている. 今までの雪の結晶成長シミュレーションは2次元セルオートマトンを用いているが,実際の雪の結晶は一見2次元的な構造をしていても実際には3次元な構造を持っている.このため,セルオートマトンの遷移関数の物理的な意味を解明するためには,3次元モデルを構築しシミュレーションを行う必要があると考えた. まず,六角格子上にセルを配置した2次元セルオートマトンのモデルを参考に3次元セルオートマトン上にモデルを構築した.そして,3次元モデルによって生成されたパターンを様々な角度から観察するための3D表示システムの構築を行った.このモデルを用いてシミュレートを行った結果,3次元的な結晶である針や角柱といった結晶の類似パターン生成に成功している. 今後,3次元モデルのシミュレートから得られたデータを解析し,セルオートマトンの遷移関数の持つ物理的な意味を明らかにすることができれば,Wolframの理論の正しさを証明する1つの突破口となりうると考えられる.また,他のシミュレーションにおいても有用であり,様々な分野の一見複雑にみえる現象のメカニズムの解明に繋がる.
|