2010 Fiscal Year Annual Research Report
海馬と大脳皮質における相補的な学習システムのモデル化に関する研究
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19700217
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
服部 元信 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (40293435)
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Keywords | 海馬 / 大脳皮質 / CLS理論 / 記憶 / ニューラルネットワーク |
Research Abstract |
脳における宣言的記憶の形成では,海馬が一時的な記憶の貯蔵庫,大脳皮質が最終的な記憶の貯蔵庫として機能していると考えられている.本研究では,生理学,解剖学,神経心理学などの知見に基づき,海馬と大脳皮質を含む神経回路網のモデル化を行い,両者における相補的な学習の仕組みを主に計算機シミュレーションによって明らかにすることを目的としている. 今年度の研究では,まず,先に構築した海馬と大脳皮質を含む神経回路網モデルの特性を計算機シミュレーションにより調査した.大脳皮質に相当するネットワークでは,新規な学習データを追加学習によって長期記憶として保存する必要がある.このとき,すでに蓄えられている学習データの破局的忘却を抑制しなければならない.従来の研究では,大脳皮質に相当するネットワークで擬似パターン群を形成し,新規な学習データとともに学習させることでこの問題に対処していた.本研究では,これらに加え,海馬ネットワークからカオス想起によって抽出されたパターンに基づく擬似パターン群も併せて用いることで,より効果的に破局的忘却を防げることを明らかにした.また,今年度の研究では,海馬の解剖学的な知見に基づき,従来の1層のみからなる単純な海馬モデルを,嗅内野,歯状回,CA3からなる多層構造のネットワークに拡張した.さらに,歯状回で発見されている顆粒細胞の発生・死滅現象に関する生理学的知見をモデルに採り入れた.計算機シミュレーションの結果,この新しい海馬モデルにより,これまでの海馬モデルでは学習が困難であった非常に類似度の高いパターンの学習が可能になるとともに,記憶容量が大幅に改善されることが明らかになっている.
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