2008 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット上の相互扶助における匿名性がもたらす信頼性に関する研究
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19700241
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
折田 明子 Chuo University, 戦略経営研究科, 助教 (20338239)
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Keywords | 情報社会学 / 匿名性 / アイデンティティ / 相互扶助 / ネットコミュニティ / 知識共有 |
Research Abstract |
本研究の目的は、インターネットを介した相互扶助において匿名性がもたらす信頼性を検証し、匿名性を活用した相互扶助の実現に貢献することである。本年度は、第一に匿名性の構造分析によるモデル化、第二にインターネット利用者に対して実施した調査結果の分析(昨年度より継続)、第三にサービスのおよびインタビューを実施した。 匿名性という言葉の再定義は、昨年度明らかにした「本人到達性」「リンク可能性」に加え、匿名性を誰の観点から扱うかという構造的な観点からモデル構築を進めた。匿名性の影響は文脈によって変化するが、構造的な観点を採用したことにより、サービスの設計可能性を示すことが可能となった。 調査結果の分析からは、インターネット上のソーシャルメディア利用者が志向しているのは「匿名」というよりは、「別名」であり、自らの投稿履歴や属性をむしろ蓄積し、公開したいという意向が読み取れた。ただし、こうした意向は実際の利用実態に反映されていないことも同時に明らかになった。 既存のサービスを、構築したモデルを元に分類し、インターネット利用者の情報交換サイトの運営者らにインタビューを実施した。その結果、いずれのサイトにおいても利用者IDによって行為をリンク可能な状態にすることで、匿名性よって引き起こされるデメリットを軽減しつつ匿名のメリットを活かす工夫がなされていることがわかった.これらの結果を本研究で構築したモデルを援用して分析した結果、インターネット上の匿名性は設計可能な要素であることが明らかになった。 本研究の成果は、著書(共著)1件、国内論文誌2件、国際学会3件、国内学会6件、新聞社サイトにおける連載記事において発表した。また、Webサイトを通じて随時公開している。
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